Impressions
チュニジア共和国のメロディック/プログレッシヴ・メタル・バンド MYRATH の4thアルバム。
北アフリカに生きる自民族のアイデンティティをしっかりと封じ込めたキャッチーな楽曲の比類なき完成度の高さにはこれまでの作品でも大きく驚かされてきたが、本作ではワールドワイドな洗練をさらに強化。出身国のハンデをものともせず、一気にシーンの中核に踊り出ん勢いに満ちた力作を提示してきた。
アラビアンな中東音階の中にスパニッシュ風味の情熱も感じさせる異国情緒たっぷりのオリエンタル・メロディが悠久の歴史をたおやかに綴る一方で、ソリッドに刻まれるリフと手数多めに攻めるエクストリームなリズムがモダンなエッジを形成するその独特のスタイルは、“KAMELOT meets ORPHANED LAND”という素地に SYMPHONY X エキスを小匙一杯加えた...と喩えたくなるものだ。
前作と比較してスケール感と取っ付き易さの双方を共に激増させた楽曲群は、含有するエスニックな旋律美の求心力がハンパない強力な仕上がりに。勇壮なイントロダクションに続くキラー・チューン #2 "Believer"、哀愁のアラブ慕情をプログレッシヴに綴る #4 "Nobody's Lives" らをはじめとするどの曲も、ヴァイオリンやリュート、ナイ(葦笛)等の生楽器も絡めたオーケストレーションの劇的な装丁の中にキャッチーなフックが満載されているのが凄い。
終始アラビック・スケールが連発され続ける様にはちょっとだけ胸焼けもするけど(^^;)、それを魅力へと転化させているのが、各メンバーのプレイヤーとしての資質の高さ。柔和な色艶と情熱的なパワーの両面を駆使してナイーヴなメロディを歌い上げるフロントマン Zaher Zorgati (vo) の存在感にも目を瞠るけど、俺的にはやっぱりギタリスト Malek Ben Arbia のプレイがとにかく響きまくり。胸を掻き毟られるような叙情美にソロイスト的な技巧的リックをスリリングに絡めながら楽曲のハイライトをしっかりと構築していくセンスの素晴らしさには悶絶する他ないですわ。どの曲もギター・ソロ・パートに到達するのが楽しみでたまらないもんね。(笑)
そんな感じで、まだ2月ではあるけど今年を代表する作品のうちの1枚となると間違いなく確信できる充実の1枚です。あ、ちなみに、プロデューサーは ADAGIO の Kévin Codfert (key)。ADAGIO もそろそろ新しいの出して欲しいよな・・・