Impressions
スウェーデンのメランコリック・ポスト=ロック・バンド PAATOS の 3rd アルバム。
女性シンガー Petronella Nettermalm 嬢 (vo, cello) の齢三十五ならではの色香漂う魅惑のアンニュイ歌唱をこれまでになく前面に推し出した“歌モノ”な作風ながら、スタイリッシュなモダニズムと呪術的な土着感との鬱々としたプログレスが生む極上の絶望が放たれる傍から垂れ込める奇形の曇天に吸い込まれていく光景の美しさは、一切揺らいではいない。
前2作に比べるとややコンパクトな印象ながらも、それぞれが情景的な深みに満ちた楽曲の粒の揃い方は見事で、澱んだ浮遊感が躍動するサビの7拍子がたまらなく心地好い #1 "Shame"、北欧の薄い木漏れ日の下で淡い哀感が清閑に沁み出す #3 "Falling"、ゴシカルな陰鬱グルーヴの美しさに震える #5 "Is That All?"、弦楽/メロトロンを総動員して幽玄に悲愴ドラマを描くハイライト #8 "Not a Sound" らをはじめとする魅力的な楽曲群が、もう KING CRIMSON の名をを引き合いに出す必要を感じさせぬ「PAATOS 風」と言える個性に包まれているのがポイント高いわ。
(Jun, 11, 2006)
満足度 : 88%