Impressions
DIMMU BORGIR / Abrahadabra (2010)
ICS Vortex (b,clean vo), Mustis (key) の2人が脱退…。残った Shagrath (vo/OV HELL), Silenoz (g), Galder (g/OLD MAN'S CHILD) の3人を正式メンバーに、大勢のゲスト陣を迎えて制作された8thアルバム。
総勢53名からなる The Norwegian Radio Orchestra & The Schola Cantorum Choir によるふくよかな生オケ&生クワイアを全編に配して壮麗なダイナミクスを放射する本作は、聴き込みを要した慎重さに包まれた前作 "In Sorte Diaboli" から一転、神盤 "Death Cult Armageddon" には及ばずもそれに準ずる手触りの、かつての BORGIR らしい即効性の高さの復活に頬が緩む力作となった。
4〜5分台メインの尺ながらコンパクトさ感じさせない濃厚なアレンジで迫る楽曲群は、オーケストラル・メタルならではのボンバスティックな爆風が高揚感を煽る活きのいい造り。その音塊からブラック・メタル本来の邪悪な思想性はさらに伝わって来難くなったけど、今回はリーダートラック #3 "Gateways" をはじめそれぞれの楽曲の出来が押し並べて良いので、そのあたりはまぁ無問題♪ Galder 先生 & Silenoz のギター・チーム、そして2曲で客演した Andy Sneap (g/SABBAT, Producer) によって意外にも弾き込まれてるギター・パートが "Enthrone Darkness Triumphant" に近い雰囲気を創出してるのも超グッと来るポイントだしね。
ただ、そういったように非常に良い作品になったと思えるだけに、ここぞ!という場面で Vortex 様 の「流星ノーマルヴォイス」が聴こえてこないことが余計に惜しく感じられてしまう・・・。奇才 Snowy Shaw (vo/THERION, KING DIAMOND, MERCYFUL FATE, NOTRE DAME, MEMENTO MORI, DREAM EVIL, XXX, etc. 本作ではベースも担当) と Kristoffer Rygg (vo/ULVER) がノーマルヴォイスを分け合い、Agnete Kjølsrud 嬢 (DJERV) による女声パートをもフィーチュアしてその穴を埋めようと努力しつつも、やはりここ数作での魅力の大きなウェイトを占めていた Vortex 様 の「特別な声」の代替という重責は果たせず・・・。なんとか復帰してくれたらホントに嬉しいんだけどねぇ。