Impressions
ノルウェーの耽美派ゴシック・メタル・バンド TRISTANIA の 4th アルバム。
前作リリースから3年半の間に、それまでの作品を覆い包んでいた一撃必殺の壮麗極まりないオーケストレーションを大幅に減退させていたのは、アートワークのシンプル化から受けていた不穏な予測にほぼ沿った変化だった。
が、Morton Veland (vo,g/現 SIRENIA) の遺産だったとも言えるその宗教祭事的シンフォニーを完全に燃焼し終えて灰と化した廃墟に姿を現した、端整なケイオスがダークに反復するモダン・ドゥームのグルーヴィな味わいは、この TRISTANIA の新たな魅力としてしっかりと機能しているようでホッと一安心。
もちろん、これまでの耽美的な魅力を全て捨て去ってしまったわけではなく、細部まで詳細に作りこまれた繊細かつヘヴィなダーク・ゴシック/デス・メタルに哀しき美麗フィーリングを淡くしかし深く滲ませた結果、アルバム全体の雰囲気の良さだけではなく個々の楽曲そのものの輪郭がよりシャープに浮き上がってきたという嬉しい副作用も感じてみたり。
美貌の巨乳フィメール・シンガー Vibeke Stene タンの優しさに満ちた清らかなソプラノ歌唱も、前作では Ronny Thorsen (TRAIL OF TEARS) が客演していたデス・ヴォイス・パートを歌う Kjetil Ingebrethsen とクリーン・ヴォイス担当の Osten Bergoy の2人の新たな専任♂シンガー達の歌声とほぼ同率で分担されてその出番自体は減りつつも、それぞれの個性の交錯の中でさらにメリハリ強くドラマを生み出すのに貢献してる感じ。
確かにこの変化(というほどでもないけど)に最初は落胆に近い驚きがこの身を包んだけれども、アルコールと共にじっくりと聴き進めるうちに、幽玄に揺れる絶望の中に Vibeke タンによるエンジェリックな救済がゆっくりと舞い降りる心地よさ満点のアコースティック・ゴシック #4 "Cure"、前作での Pete Johansen (violin) に代わって ARCTURUS でもプレイしていた Hans Josef Groh なるチェロ奏者が情感を豊かに震わす #3 "The Wretched", #6 "Shadowman", #8 "Endogenesis" あたりのアルコールの肴向けの大曲群を中心に、全てがググッと心に迫ってくるようになってきたですわ。
限定デジパックに収録されたボーナス・トラック #7 "The Gate" も、ボーナス扱いであることが謎な実にイイ曲で、ちょいと得した気分~。
(Feb. 01, 2005)