Impressions
STRATOVARIUS / Elements Pt.1 (2003)
前作から約3年のインターバルを空けてのリリースとなった STRATOVARIUS の 9th アルバム。
リリース前に本作のフル音源がネット上に流出してしまった事に対して Timo Tolkki が「ダウンロードしたファンも探し出して全員訴えてやる!」なーんて強硬な姿勢を取っちゃったもんだから一部でえれー騒動に・・・ってなこともあったなぁ。
まぁそれは置いといて音の方は、欧州シーンを形成するピラミッドの頂点付近の位置に存在するベテランバンドならではの風格を感じさせる精密に創り込まれた極上のヨーロピアン・ヘヴィ・メタルで、相変わらず安心の品質の高さを誇っている。
オープニングのリーダー・トラック #1 "Eagleheart" が前作のリーダー・トラック "Hunting High and Low" に通じる作風・・・ってゆーかそのクリソツ振り(苦笑)から予想したとおり、全体的にはその前作 "Infinite" と同路線なのだが、一聴してこの耳がまず捉えたのは、よりシンフォニックになったその質感。
そのミドル・チューン #1 "Eagleheart"、そして #3 "Find Your Own Voice", #5 "Learning to Fly", #7 "Stratofortress" といった「STRATOVARIUS 節」バリバリな疾走曲にもそのゴージャスな装いは見られるのだが、特にその傾向が顕著なのがそれらの合間に配された大曲/バラードの数々だ。
澄んだ空気を豊かなに震わすストリングスやゴスペル・クワイヤに彩られた壮大な情景描写が心地良い超ドラマティックな装いは、STRATOVARIUS が今後進む新たなステージを感じさせるに十分なクオリティに包まれてはいるものの・・・やっぱ冗長なんだよね。
楽曲を構成するパーツをそれ単位で見ればそれぞれ魅力的であったりするんだけど、通して聴いていてふと気付くと、確実に堪能してはいるんだけど心のどこかで退屈さを我慢している自分がそこにいる・・・みたいな。なんだか 3rd "Dreamspace" を初めて聴いた時の感触に似てるな。
そして、それらのマターリとした大曲以外の前述のスピード系チューンも、疾走を始めた瞬間にはカナーリ悶絶しちゃったりするんだけど、やっぱ既発曲とほぼ同じスタイルがベースになっててイマイチ代わり映えがしない・・・ってのが正直なところ。変わらないのは全然悪いことじゃないけど、なんだか音符を置き換えただけって感じでどうも刺激が足りないんだよな。。。
が、そんなマイナス点を補っているのがプレイ面の意外な程の充実。細かなタッチによる表現力をアップさせてきた Timo Tolkki、悲壮なまでの哀しみを携えた歌声で堂々と歌い上げる実力派カリズマ・シンガー Timo Kotipelto、随所で影のテクニシャンぶりを発揮する裏の番長 Jari Kainulainen、疾走曲では超前のめりで突っ込みつつヘヴィ・チューンでは腰の据わったビートもこなして凄みを発散する Jorg Michael、そして改めてフォロワーとの違いを見せつける Jens Johansson という5人の円熟プレーヤ達の生々しい鬩ぎ合いは、コレまでの作品にない程に聴き応えアリ。
中でも、本作では楽曲をリードする場面も大胆に増加した Jens Johansson の独特のセンスはやはり「別格」を感じさせる凄まじいもので、モジュレーションの位相を揺らしながら絶妙のタイム感でエモーショナルに弾き出すソロ・パートには悶絶するしかないですわ。12分の大曲 #8 "Elements" も、冗長な前半を耐え抜くと(苦笑)後半に Jens の悶絶ソロが待ってると思うとそれ聴きたさにリピートしちゃうんだよねー。
(Jan. 24, 2003)