Impressions
DALI'S DILEMMA / Manifesto for Futurism (1999)
もともとこの DALI'S DILEMMA なる奇妙な名前を持つバンドに興味を抱いたのは、98年7月にリリースされたMagna Carta レーベルによるテクニカル=プログレ・プロジェクト EXPLORERS CLUB による作品、"Age of Impact" がきっかけだった。その作品において、有名どころに混じって非常なる健闘を見せた Matthew Bradley (Vo.), Matt Guillory (Key.)の両名が在籍しているとアナウンスされていたバンドが、この DALI'S DILEMMA だったのだ。
そして待つこと約一年弱、ここに届いた待望のデビューアルバムは、その膨らみきった期待に違わぬ素晴らしい出来! ホッ。。。良かったぁ。。。
メンバー全員のウルトラ・ハイ=テクニックを駆使して展開されるスリリングかつメロディックな劇的プログレ・メタル・サウンドを耳にした100人中100人全員が、一瞬のうちにその脳裏に DREAM THEATER の名を連想することは神に誓って間違いないが、シンガー Matthew Bradley のややワイルドながらウェットな表現力も豊かな、まさにプログレ向きの「いい意味で没個性な」存在感ある歌唱と、ギタリスト Patrick Reyes の仄かにネオ=クラシカルなタッチが醸し出す叙情が、時に本家以上に魅力的な部分を露わにしたりするのが興味深い。
そしてこの DALI'S DILEMMA が昨年話題となったイタリア産 DREAM THEATER クローンである ARKHE, ZEN らの連中と決定的に異なるのは、やはりアメリカのバンドであるゆえのポピュラリティに満ちたバランス感覚を保有している点だろう。それぞれのスリリングな楽曲の中で確実に息衝くキャッチーで洗練された叙情メロディは、「歌モノ」としても通用する魅力がある。
細かいところを突いていくと、実はまだまだ楽曲に一人よがりな部分があるのは否定できないが、それを差し引いても技に驚き、メロディに酔い、そしてスリルに耽溺できる至福の一枚だよん。(99/05/13)