Impressions
スウェディッシュ・オーケストラル・メタル THERION の 8th アルバムは、"Theli" で開花したクラシックとメタルの融合という現在のスタイルが、試行錯誤の末に理想的な形で結実をみた感のある佳作に仕上がった。
5th アルバム "Theli" で叩きつけられた衝撃的な壮麗たるメタル・オペラは、"Vovin", "Deggial" と確実にそのスケールを肥大させていったにも関わらず、残念ながらその良好なムードまでには楽曲そのものの魅力やプレイの質がついていっていない印象だった。
ところが、今回 Christofer Johnsson が提示してきた古代ノルウェーのルーン文字伝説に基づいた物語は、これまで同様のオーケストラと混声合唱団を伴った壮大なメタル叙事詩でありながら、9つの世界を表現したそれぞれの楽曲がこれまでとは桁違いに魅力的に聴こえるのは、一重にバンド・セクションの充実に拠るところかも。
アコースティック・パートの効果的な導入や、ドラムのグルーヴ感の増加、そしてギタリスト Kristian Niemann の超テクなネオ=クラシカル・プレイの大幅なフィーチュアなどによる、バンド・セクションで閉じた部分においての上質な抑揚が功を奏して、オーケストラとの自然な溶け込み方はこれまで最高。男声女声それぞれによる有機的なソロ歌唱パートの増加も嬉しいしね。
正直、それぞれの楽曲でどーのーというよりは、全体の流れや雰囲気に圧倒されちゃうというのはあるんだけど、今回はそれを差し引いてもなかなか楽しめる一枚となったと思う。
既発曲のリミックスながら SCORPIONS の "Crying Days"、ABBA の "Summer Night City" それぞれのカヴァーがボーナスで収録されているのもナイス。
しっかし Kristian Niemann ってホントいいギター弾くよなー。って、結局ネオ=クラ部分に釣られているのかよ!((c)三村/笑)