Impressions
ジャパニーズ・プログレッシヴ・メタル・バンド ALHAMBRA のデビュー・アルバム。
デビュー作と言っても、その前身は 10年以上のキャリアの間に海外レーベルからも含めて3枚ものアルバムをリリースした MARGE LITCH・・・という、既にベテランと呼んでも差し支えないポジションに位置しているだけに、その内容は経た年輪相応の老獪な安定力を感じる非常にハイレベルな仕上がりだ。
「年輪」「老獪」と表現しながらも、その MARGE LITCH 時代に掲げていた“スーパー・ファンタジック・プログレッシヴ・メタル・シンフォニー”を一般メタルファンにも解り易い形に継承/進化させたかの超テクニカルで超ドラマティックな楽曲群は NOVELA 由緒の伝統的な日本語プログレ・ハードの基盤を根底に持ちつつ、現代欧州メロディック・メタルの疾走するスピード、様式美メタルのネオ=クラシカルなスリル、さらには InsideOut/MagnaCarta 系テクニカル・プログレのモダンさまでもを吸収/消化し、決してオッサン/ヲバハン風の保守的センスに留まり得ない“今に生きる新鋭プログレッシヴ・メタル・バンド”としての若々しい刺激に満ち溢れているのが◎ッスね。
普通に“メロディック・スピード・メタル・チューン”として悶絶疾走をかます #3 "Missing You"、悲愴なる叫びを乗せたドラマティックな三連チューン #4 "人形の家"、キャッチーなメロディが印象的な中庸ドライヴァー #7 "Faith" などに代表されるように、随所でメタリックに疾走したりネオ=クラシカルなユニゾン攻撃を決めまくったりと全体的にかなりメタル色の強い音像になっていながら、そのプレイとアンサンブルの感触は完全に真性プログレッシヴ・ロック的な物・・・という独特のバランス感覚が生む「深み」の存在が非常に美味しいんだけど、その大黒柱が“青髭のプリンセス”(笑)こと鍵盤麗人 Yuhki 様その人。
ギタリスト Goh Ikeda のスムースなネオ=クラシカル・プレイ(ライヴでのイマイチ弾ききれないもどかしさを完全に払拭した本作での録音は秀逸!)に対峙してスリリングに弾きまくる技量の高さはもちろん、海外の一線級にまったく引けを取らぬ天才的なプログレッシヴ・センスにもホント脱帽で、これを聴いてると GALNERYUS や ARK STORM での彼のプレイがまるで子供のママゴトのように思えてくるから不思議なもんだ。
ただ、紅一点の看板女性シンガー Junko Sera おねえさんの超ワイドレンジなクラシカル歌唱は・・・諸刃の剣だよなぁ。どこまでも際限なく伸びる表現力たっぷりの歌声の飛翔感は心地よくも、時折感じさせるアニメの主題歌的な明快さを備えた歌謡フィーリングや、やや不安定気味な細かめのヴィブラートは、やっぱりちょいと苦手。。。
(Feb. 08, 2005)