Impressions
DREAM THEATER / Octavarium (2005)
トップ・プログ・メタル・バンド DREAM THEATER の 8th アルバム "Octavarium" は、そのタイトルどおりの“8”そして“5”という数字に関連する謎を色々な要素に散りばめるというアートな仕掛けを伴っての登場。
そのプログレッシヴな装丁に反比例するように、その内容は持ち前の先進性をそこそこに留めてこれまでを振り返ることに重点を置いたかの集大成的なもので、前作収録曲 "This Dying Soul" を引用しながら乾いたヘヴィネスを回転させる地味目のオープニング・チューン #1 "The Root of All Evil"、浮動票層が好んで聴くようなコテコテのメロウ・バラード #2 "Answer Lies Within"、ポンプな浮遊感がプログレスする #3 "These Walls"、今の DREAM THEATER には演ってほしくないポジティブな希望的メロディが聴こえた瞬間マジでストップ・ボタンを押しそうになった(苦笑)#4 "I Walk Beside You"・・・と、前作で表層に浮き出てきた「変態テクニカル暗黒プログレッシヴ・ドゥーム・メタル・バンド」(笑)としての誇り高き自覚の欠片も感じさせないヌルい印象の前半に、不安は募りまくるばかり・・・。
が、後半で雰囲気は一変。眩暈を覚えるほどに攻撃的なまさにタイトルどおりのプログレッシヴ・メタル・チューン #5 "Panic Attack"、元ネタと言われる MUSE の存在すらこの曲の中間部のウルトラ悶絶ネオ=クラシカル・ソロ・パートを生むためのモノだと考えれば愛おしく思える #6 "Never Enough"、BLACK SABBATH のモダンな翻案っぷりが運んでくるトリッピーな幻惑がタマラン #7 "Sacrificed Sons" の3連発はあまりに強力で、前述のやや薄味の前半と最後に鎮座する24分にも及ばん TRANSATLANTIC 風味のマターリ超大作タイトル・トラック #8 "Octavarium" のボチボチ具合を帳消しにするその威力の前にすっかり大盛り上がりだ。
だけど・・・うーん、“8”と“5”の謎って「収録されてる音符の数が従来比 5/8」ってこと?(苦笑)みたいな、全体的にスリルよりはエモーションの方を強調したような作風からは、楽曲に対する根本的な思考方法が今までとはちょっと変わったような雰囲気なんだよね。James LaBrie (vo) の THE DARKNESS 調のキモめなエモ歌唱もそうなんだけど、なーんかメンバー全員の目指す先が一致していないような危うさを感じるってのは・・・チョイ気にし過ぎかな?
まぁ今のところは一部の曲を除いてやや散漫な印象だけど、今後聴き込んだり "Falling into Infinity" ん時みたいにライヴ・ヴァージョンで聴いたりするに連れ、ジワジワと良さがにじり寄ってきてくれることを期待デス。
(Jun. 07, 2005)