Impressions
VINTERSORG / The Focusing Blur (2004)
その類稀なるハイブリッドなデス/メロディックな歌いっぷりから BORKNAGAR の専任シンガーとしても活躍することとなった、スウェーデン人マルチ・プレーヤ Vintersorg 君のリーダー・プロジェクト VINTERSORG の 5th アルバムは、ある男の科学と信仰への限りなき渇望の回廊を封じ込めたコンセプト・アルバム。
北欧デス・メタルのストイックな暗黒描写、コズミックなモダン・メタルの冷たさ、そしてオルガンの響きがもたらすノスタルジーを誘うレトロなロックイズムという一見脈絡のない各エレメントにビシッと一本筋を通しているのは、紛れもなく全編で哀愁を漂わせる Vintersorg 君が微妙な鼻詰まりヴォイスで歌う、北欧フォークロアな色彩感溢れるヴァイキング的とも言えよう哀愁の朴訥歌唱。
収録された楽曲は、一見さんには確実に慣れが必要と思われる独自解釈の不協和音センスが発揮された、イマイチ掴み所に欠ける奇妙でアバンギャルドな出で立ちながら、それを「創造性の高さ」として聴き手に受け入れさせる妙な説得力を持ち合わせた逸品揃いだ。
その説得力の一端を担うのが、Steve DiGiorgio (SADUS~DEATH~TESTAMENT) と Asgeir Mickelson (SPIRAL ARCHITECT, BORKNAGAR) の人智を超えた熟達プレイ。彼らのヘヴィ・メタルに留まらぬフレキシブルなセンスに満ちた奥深いプレイが、この VINTERSORG を単なるノーマル/デス・ヴォイス・スイッチ型デス・メタルに留まらないその一段上のステップに押し上げていると言っても過言ではないだろうね。
傑作レベルの出来だった前作 "Visions from the Spiral Generator" と比べると、正直フックがやや後退してしまった感は否めないけど、#7 "A Microscopical Macrocosm" での穏やかに広がるプログレッシヴな叙情美を体験しちゃうと、そんなことがトテーモトテーモちっぽけな事に思えてきちゃうってのが「信者」の辛ぁ~いとこデスわ。。。(苦笑)
(Mar. 08, 2004)