Impressions
黒き毒の沼地の彼方に沈む夕日を追ううちに辿り着いたのは・・・朽ち果てた廃屋。孤高のプログレッシヴ・デス・ロッカー OPETH が、神盤 "Blackwater Park" から驚きのショート・スパンでリリースしたこの 6th アルバムで描くのは、その廃屋に充満する陰鬱なる死の香りが誘うモノクロームの心象世界。
全6曲中イントロ扱いの1曲を除く全てが10分を超える大作主義だっちゅーのが聴く前から既にある種の嬉しさを感じさせるが、CD プレイヤのスタート・ボタンを押して数秒後には、ひねくれた不協和音が響く一筋縄ではいかないデス・メタル・パートと儚げな美しさに輝くピースフルなアコースティック・パートが、アップ&ダウンを繰り返しながら聴き手を翻弄する・・・という既に強固に確立されている OPETH 節が本作でもしっかりと踏襲されているのがわかり、大満足でこの顔もニコニコだ。(^^)
息が詰まる程の狂気を孕んだ緻密さと安堵を齎す長閑なシンプルさが、ギリギリのバランスで綱渡りする OPETH 独特のプログレッシヴな音像が招く空気感はやっぱり心地良く、底知れぬ深さで拡散するプログレッシヴな反復が陶酔を誘う #2 "Deliverance"、狂気なる哀鬱が淡く滲むバラード #3 "A Fair Judgement"、閉塞感たっぷりのドゥーミーな引き摺りから一転してサイケ・フォークのフラワーな微笑みに支配される #5 "Master's apprentices"・・・と、シンガー Mikael Åkerfeldt の激しい咆哮&デス・メタル・シンガーがただ単に普通の声で歌ってみたというレベルでは有り得ない美声が切々と綴るこの救い無き暗黒世界を聴き進めれば聴き進める程、この身はどんどん深みへと落ちて行ってしまう。
この OPETH、精神性こそ深遠に拡散する PINK FLOYD 的なものでありながら、用いている絵筆があくまでヘヴィ・メタルのフォーマットに則った表現手法だというのが嬉しいんだよね。たっぷりとフィーチュアされた Peter Lindgren のエモーショナルなギター・プレイや手数とグルーヴを両立した Martin Lopez のドラミングの妙などの有機的な息遣いは、ミュージシャンとしての資質の圧倒的な高さを感じさせるし。
本作は 2003年3月リリース予定の「ソフト」な "Damnation" と対を成す「ヘヴィ」な作品としてリリースされたものだけど・・・いつもより特別にヘヴィという印象はないなぁ。OPETH らしいメロウな味わいもちゃーんと沢山入ってるしね。
ま、何はともあれ "Damnation" が楽しみや!!
[Jan. 08, 2004 追記] ソロ・パートの多くは Peter Lindgren でなくて Mikael Åkerfeldt が弾いてるらしいデス。