Impressions
イタリア産シンフォニック・ブラック・メタル・バンドの 3rd アルバム。
イントロダクション #1 "The Torchbearer" に続くオープニング・チューン #2 "Dance of Hecate" の冒頭、整合感に溢れたパワー・フィルの一瞬のブレイクに女性の囁きが響き、それに導かれて堰を切ったようにゴージャスなシンフォニー渦巻くクッサクサな超絶疾走が爆発する・・・という一連の流れを聴いちゃあ、なにはなくともまずはガッツポーズで悶絶失禁でしょ。
壮麗なオーケストレーションになかなかのメランコリックな泣きセンスを聴かせるギター・ハーモニーのアンサンブルを織り込んだ極めて北欧的なシンフォニック・ブラック・メタル・サウンドは、確かに DIMMU BORGIR の名を思い起こさせるものではあるが、彼らの配下である OLD MAN'S CHILD ~ CATAMENIA らに通じる寒々しい空気感とともに全編を支配する、欧州メロディック・スピード・メタル勢に通じる情熱的とも言えるほどのパワフルなエピック風味が、この STORMLORD を単なるフォロワーには決して留まらぬスペシャルな存在にしているんだと思えるね。
何といっても、前作で感じられてしまった音質面でのマイナス点が見事に払拭されているのがとにかくデカい。ここに実現されたタイトなプロダクションによってドラマティックな緩急に更にメリハリが生まれ、静のパートのゴシック的とも言える耽美なメロウさが一段と際立つ結果になっているのがポイント高いッスわ。絶叫にグロウルを交えて邪悪に迫るシンガー Cristiano Borchi がそういった場面で時折聴かせる低音ボイス(イタリア語?)のセクシーな響きが醸し出す欧風情緒も美味しいし。
が、そういった全体的なムードの良さこそ特筆すべきものなんだけど、個々の楽曲としては実はそれほど印象に残ってこないという欠点もアリ。うーん、なんというか・・・展開テンコ盛りなんだけど、その整理にやや詰めの甘さが見えるって感じかな?
もう一点、超速なツーバス疾走や激烈ブラストのエクストリームなドライヴ感と、なかなかの技巧派であることを伺わせる絶妙なライド・ワークを聴かせるドラマー David Folchitto が、スゲー良いビートを叩き出しつつも、フィル・インになると単調な16分のタム回しに終始しちゃうことが多いのも、上手い人だけになんだか勿体無い。。。
とはいえ、超魅力的な音像の詰まった一枚であることには変わりなく、末長くリピートして楽しめることは請け合いデスな。
IRON MAIDEN のカヴァー #9 "Moonchild" は、原曲が如何に名曲であるかを再認識させてくれると同時に、鍵盤ソロや独自のハーモニー・パートの付加による新解釈が新たな生命を与えた名演!
(Mar. 02, 2004)