Impressions
CRADLE OF FILTH / Damnation and a Day (2003)
ブリティッシュ・オーケストラル・ヴァンパイア・ブラック・メタルの雄 CRADLE OF FILTH が、大手メジャー・レーベル Epic に籍を移しての 5th アルバム。
映画音楽・・・しかも力技や人海戦術で圧倒的なスケールを描いていた60~70年代のスペクタクル巨編のそれを想わせるキッチュなオーケストレーション&クワイアに包まれた、戦慄のエクストリーム・エンターテインメント・ミュージックはこれまでよりさらに研ぎ澄まされた印象で、全17曲77分に及ぶ4部構成のこの異形世界は、一度プレイボタンを押すと最後まで聴かずにはおれない魅力でいっぱい。
一聴して驚いたのが、重量感を大幅に増したギター・リフ&リズム隊の生む「ヘヴィ・メタル」なダイナミズムの激増っぷり。#4 "An Enemy Led the Tempest", #6 "Better to Reign in Hell" に代表されるような、Martin Powell の奏でるシンセのプラスティックな冷徹さと Budapest Film Orchestra による生オケの有機的な響きが交錯する中、これまでになくヘヴィな音の塊が不穏にウネリまくる音像がとてつもなく刺激的。
もちろん Dani Filth の表現力も孤高の域まで達しようとしてるかのようで、絶叫、咆哮、ウィスパリングを複雑にスイッチさせながらクライマックスを描いてゆくその手法は「進化した KING DIAMOND」という信じ難いほどに神々しい比喩(笑)をしたくなるほどに素晴らしい。#10 "Presents from the Poison-Hearted" のAメロ部分での微妙な吐き捨て具合も新機軸で超エクスタシーだし。とにかく、堰を切って破裂するブラストと共に Dani がスクリーミングする瞬間、毎回背筋がゾクっとしちゃうってのはほんと凄いことやね。
あ、メロディック・スピード・メタル風味の判り易さを持った #3 "Hurt and Virtue" も特に好きな曲の一つ。
いやはや、文句なしでこれまでで一番好きッスわ。ただ、一音も逃さずに集中して聴きたい音像であるだけに、77分は・・・やっぱちょっと長い~。(^-^:)
(Mar. 09, 2003)