Impressions
イタリアン・シンフォニック・ブラック・メタル・バンド GRAVEWORM の、ギターの片方とドラマーをチェンジしての 5th アルバム。
扇風機ヘドバン女王(萌)Sabine Mair タン (key) の壮麗シンフォニック・ベールに包まれて、パワフルなリフが重厚に疾走する・・・というゴシック風味を感じさせる基本的な路線は堅持しながらも、本作ではその作風を一気にシンプル&ダイナミックな方向にシフトさせた感のある、精力的なライヴ/ツアーで固めた足場を基にここで一気に飛躍に向けてスパートを掛けたかの印象。
最長でも4分台の長さにまとめられたコンパクトな楽曲(そのおかげで総ランニング・タイムは38分弱…)は、これまで以上にライヴ映えすると思われるキャッチーで緩急に長けた佳曲揃いで、そこにはメジャー感すら漂い始めているかのよう・・・
・・・なんだけど、相変わらずの器用さを見せるシンガー Stefano Fiori による絶叫/グロウルのスイッチの妙も、前述の Sabine タンの華麗なる白玉攻撃も確かに大活躍してはいるんだけど、それらがこれまで GRAVEWORM 最大の魅力ポイントと感じていた「荒れ狂う悲愴感」にイマイチ結びついてないっぽくないかい?・・・と思えるのが、聴いててなんとももどかしい感じだなぁ。。。
もともと個々の楽曲そのものの魅力というよりは、全体を包むその独特のミスティックな哀しさが生む良質のバランス感覚に惹かれていただけに、本来この物足りなさは致命的ではあるハズではあるんだけど、そこはさすが GRAVEWORM、本作で一本筋を通しているライヴ・ショウを見据えた「ノリ易さ」は確実に新しい魅力だし、終盤の 8# "Outside Down" ~ #9 "MCMXCII" ~ #10 "Losing My Religion"(REM のカヴァー/限定デジパックのボーナス・トラック)で遅まきながら爆発する従来どおりの悶々としたメランコリーのおかげもあって、結局全体としてはそれなりに好印象だったり。(安堵)
まぁ、耽美な彫像アートワークがこれまでになくナイスな出で立ちなので、内容のそれとは別方向への進化を考えるとチョイト痛し痒しではあるんだけどね、やっぱ。
(Jan. 26, 2005)