Impressions
フィンランドの悲愴系メロディック・デス・メタル・バンド NORTHER 待望の 2nd アルバム。
仄かなネオ=クラシカル・テイストとシンセによる適度なオーケストレーションに包まれたインスト陣のテクニカルな側面が映える「軽やか」とも言えるヘヴィ・メタルは、前作の随所で感じられた CHILDREN OF BODOM 風味を上手く消化した、風格すら漂うもの。そのサウンドがやや落ち着きを見せた結果、さらに際立つこととなった全編を覆い尽くす限りなく透明な冷ややかな悲愴感は、既にこの NORTHER 独特の個性としてこの耳に突き刺さってくる。
激情と冷徹さの両面を併せ持ったコンパクトな楽曲の主役は常に流れる悲しみに満ちたメロディそのものだが、そのメロディを実に見事に引き立たせているのがギタリストも兼ねる虚弱系ブロンド・シンガー Petri Lindroos の泣き系デス・スクリーム。ツーバスが16分で踏み鳴らされる程よい8ビートに乗って「♪イ゛ヤ゛ア゛ーーーーーーーッッッ!」と叫ばれる凍てつく氷原にこだまするが如きその刹那な絶叫は、デス・メタラーのみならず一般の小学生や主婦までもを虜にするほどに(笑)哀しみオーラを発散しまくり。
前作に収録されていた空前の名曲 "Victorious One" や "Dream" というクラスの楽曲は今のところ見つかってないけど、冒頭から NORTHER 節全開の #1 "Blackhearted"、ピアノの調べに脳内物質が過剰に出まくりの #3 "Of Darkness and Light"、悶絶疾走が美味しい #4 "Midnight Walker" をはじめ全ての楽曲が平均的にハイ・レベル。
また、本作で顕著なのが鍵盤奏者 Tuomas Planman の踏ん張り。素晴らしいピアノの質感がドラマを盛り立てる前述の #3 "Of Darkness and Light" をはじめ、音色/アレンジ/プレイすべてに感じることができる良質のセンスが、このアルバムのグレードをグッと押し上げてる感じ。
ただ、その出来の良い鍵盤パートと対峙する Petri Lindroos 自身が弾くリード・ギター・パートについては、相変わらず少々線の細さが目立つかな。バトル部分にしても、剣と剣とが火花を散させながら命の鬩ぎ合いをしている・・・というよりは、フルーレを華麗に操ってフェンシングの勝負をしているような感じ。その情念の薄さは美旋律の妙で充分にカヴァーされてはいる・・・とは思うんだけれど、せっかくいいフレーズ弾いてるんだからもうちょっとエモーショナルだったらもっとイイのに・・・と、ついつい無い物ねだりしたくなっちゃうな。
(Mar. 20, 2003)