Impressions
WITHIN TEMPTATION / The Silent Force (2004)
オランダが誇るトップ・オブ・シンフォニック・ゴシック・メタル・バンド WITHIN TEMPTATION の待ちに待った 3rd アルバム。
荘厳なクワイアに導かれてエンジェリック・ソプラノが天空から舞い降りる優雅な様に、思わず前作リリースから現在までの約4年の間の出来事が走馬灯のように脳裏を巡る幽玄たるイントロダクションに続き、オープニング・チューン #2 "See who I am" のダイナミックに爆発したシンフォニック・リフの爆風が吹き去った後塵とともに Sharon Den Adel タンの口から可憐な萌え歌唱が漏れ出した瞬間、この後の全てが素晴らしい内容だと早くも確信。そして終曲 #13 "The Swan Song" のラストでストリングスの余韻が消え去り、レーザー・ピックアップがしばしの休息に入ったと同時に、その確信は事実として確認された。
いやー、マジでいいッ! リリース前にリーダー・トラック #4 "Stand My Ground" の P.V. を目にし、その映像の演出手法から EVANESCENCE への擦り寄りを懸念していたが、それは一切杞憂だったわ。その #4 "Stand My Ground" をはじめとする、コンパクトだけど大仰でモダンだけどクラシカルで、その芯にはしっかりとフォークロアなケルティック風味が息衝くキャッチーな名曲の数々は、長いこと待たされた甲斐のある「WITHIN TEMPTATION 色」の逸品揃い。
力強くキックが踏み込まれ、シンフォニックな衣を纏ってはいるものの野太いギター・リフが振り下ろされるしっかりとヘヴィ・メタルな肉体を維持しながら、本作では NHK の紀行番組の BGM に使われても何の違和感もないだろう、例えば ENYA あたりにも通じるコンテンポラリなワールド・ミュージックの聴き易さまでもを備えたのがなんとも恐ろしい。
それも、国家プロジェクト・レベルの予算の存在を深読みさせる、密度濃く隙のない見事なアレンジのおかげか。オーケストレーションの空前絶後の見事さは言うまでもなく、まるで全ての楽器の全てのアタックのカーヴを一つ一つ丁寧になだらかに削り、リヴァーブの残響音の粒子一粒一粒まで計算したかのような完璧なプロダクションのクオリティの高さはマジで驚愕ものだ。
ま、それらの事項が引き立て役となって厳かに響き渡る Sharon タンの麗しき美声がすべてなんだけどね♪
(Dec. 20, 2004)