Impressions
前作 "Vain Glory Opera" は若きニューカマーとしては充分なクオリティを誇ってはいたものの、随所で目立っていたアレンジの稚拙さが気になって、ど~してものめり込むことが出来なかった。
が、イントロに続いて「ジャンルとしてのジャーマン・メタル」の理想形を絵に描いたような疾走チューン "Babylon" で幕を開けるこの新作では、そのあたりの不安が一掃されていて、その一皮向けた垢抜けたクオリティにまずはビックリ。
確かに前作での彼らの魅力の一つだった「クサいアクは」減退し、その為に骨格が露わになった楽曲は「~みたい」と指摘されるのが完全に納得できるほど類型的ではある。歌は嫌でも Michael Kiske を連想させるし、疾走ナンバーも多いしね。
だがそれを差し引いたとしても、明らかに前作よりずっと好印象だ。
数々の疾走ナンバーは当然ながら、ミディアム・テンポの哀愁メタル "Holy Shadows" でのキャッチーなセンス、"The Unbeliever" のリフ攻撃のカッコ良さ、12分にも及ぶオペラティックで大仰なタイトルトラック "Theater of Salvation" の構築美、そしてボーナス・トラックのアコースティック・バラード "Trace of Life" で聴かせるしっとりした哀感・・・その随所でこの EDGUY の特色とも言えるドラマティックなクワイヤや演劇的な場面転換は以前と比較にならぬほど洗練された形で提供されているし、ライヴでのオーディエンスの大合唱が容易に想像できるキャッチーで高揚感に溢れた「メロディの魅力」は、前作のそれを遥かに凌駕しているのだから!
そしてバンドを牽引するシンガー Tobias Sammet の、Michael Kiske を意識した歌いまわしながら、自身の勢いを見事に封入した大器を予感させる堂々とした歌唱には、心トキメかざるをえんでしょう。
目下のライバルは SEVENTH AVENUE かな。(笑) (99/01/27)