Impressions
TEN って、オレ的にはデビュー以来ずっと「威厳漂う泣きの英国王道ハード・ロック」の期待をしつつ、ある面では満足しながらも、反面では楽曲の求めるパワーと Gary Hughes の弱々しい歌唱だったり収録された楽曲の焦点のぼやけ具合だったりという「期待するものと実際のアウト・プットの間のギャップ」が感じさせる妙なバランスの悪さに、ある種の諦めを感じていた。Bob Catley のソロ作への関与っぷりに「TEN 辞めてそっちに専念したほうがいい作品作れるジャン」って思っちゃうほどにね。(苦笑)
で、アノ前作でその諦めムードが最高潮に達した後のこの本作をまず一聴した時は、そのイケナイ先入観が強かったのか「まぁまぁ悪くはないな」って程度の感想しか得られなかったが、なぜかリピートを誘うその魔力に屈して聴き進めてみたら・・・いやはやこれがすげーっすわ!
ナニがどう心境の変化をもたらしたのかは定かではないが、気負いなく哀愁を紡ぐ Gary Hughes、琴線をねじ伏せる粘り気満点の泣き泣きギターを聴かせる Vinny Burns、そして非常に効果的にフィーチュアされた新加入の鍵盤奏者 Paul Hodson のプレイが織り成す自然体の哀愁ハード・ロックの数々は実に見事。
「捨て曲なし」って言い方は好きではなかったり・・・つーかむしろ嫌いだったりするんだけど、本作を聴いて久々にそう言ってしまいたい衝動に駆られてしまった。だって、エネルギーと哀愁が交錯する "Strange Land", "Glimmer of Evil", "Black Shadows"、優しく穏やかなバラード "What About Me?", "Far Beyond the World"、アダルトな哀愁ハード・ロック "Heart Like a Lion" といった元祖 TEN ワールドが炸裂する楽曲ばかりか、プリティ・ポップな "Who do You Want to Love?"、ヘヴィ・ロック風味な "Last of the Lovers", "High Tide"、そしてそのムードがギョッとさせるダルでぶっきらぼうな "Scarlet and the Grey" という曲にまで、全曲どれを取っても切なくも甘酸っぱい泣きまた泣きの極上フィーリングが満載なんだもん。
そしてなんと言っても2曲の超キラー・チューンの存在がデカイ。極限までにクッサイ泣きメロが奔走する史上最強の TEN 的チューン "Outlawed and Notorious" と、ボーナス・トラックという扱いがにわかには信じ難いほどにこの素晴らしいアルバムをしっとりと締め括る涙腺刺激バラード "The Soldier" は、目の幅で滝の様に流れ出る涙の受け皿なしには聴けないほど。(苦笑)
泣きの新たなマスター・ピースがここに誕生!
・・・でも、Vinny Burns 辞めちゃうんだよね。。。