Impressions
「メタル」と名が付く付かないに関わらず、全ての「音楽」の頂に鎮座する奇跡のロック・バンド RHAPSODY の 5th アルバム。
前作を持って興奮のうちに完結した "The Emerald Sword Saga" の伝説を受け継ぐ新たな暗黒活劇 "The Dark Secret Saga" の幕開けを壮大に告げる本作は、The Bohuslav Martinu Philharmonic Orchestra や50人編成のクワイア隊までもを導入した過去最高にシネマティックな風合いの一枚だ。
名優 Christopher Lee の激渋ヴォイスによるプロローグに導かれる「RHAPSODY 全部入り」とも言える名曲 #2 "Unholy Warcry" から始まる、極限の高揚感を齎す大仰極まりない極上のイタリアン・シンフォニック・メタルは、始まったばかりの物語の全体像をマルチ・アングルで目まぐるしく解説するかの、起伏に富んだ超大作となっている。
前章完結作 "Power of the Dragonflames" を覆っていたクライマックスならではの切羽詰った緊迫感は希薄で、どちらかというと眼下にアルガロードの壮大な情景が広がる緩やかな流れを感じさせる部分が支配的な印象だけど、まぁそれは本作がこれから数年間続くことを約束された大いなるお楽しみのホンの序章に過ぎない・・・っつーことで、全然アリっしょ!大アリ!
そんな、作を重ねてエスカレートしきったオーケストレーションが響きまくる巨大スケールの楽曲群の中で、それらと見事に融け合う #3 "Never Forgotten Heroes", #7 "The Last Angels' Call" といった 1st "Legendary Tales" の雰囲気に通じる、Fabio Lione のこれまでよりピッチをやや上げ気味にした感のある瑞々しい歌唱で歌われるメロディが切なく響く歌メロ・オリエンテッドな中庸ナンバーの存在には、今後の続編へのさらなる期待を沸き立たせられるね。
そして忘れちゃいけないクラシカルな大曲 #9 "Sacred Power of Raging Winds" の、祖国の多くの伝説的先人達を過去に葬り去るが如きの凄まじいまでのユーロ・ロックっぷりも、マジ眩暈を覚えるほど嬉しいわ。
・・・と絶賛モードながら、冷静に考えれば冗長で新味に欠けまくりなのは確かなんだけど、そんな不満も「音楽という文化に沸き起こった奇跡」である前作 "Power of the Dragonflames" と比較すればこそ。本作が、突如地球を訪問した宇宙人にこの惑星の文化をただ一枚の CD で説明しなければならないシチュエーションがあったとしたら、その時に地球を代表する使者が迷いもなく差し出すに値するレベルをいとも簡単に超越した内容であるという事実を疑う余地は皆無ですな。(自己暗示)
(Oct. 09, 2004)