Impressions
ここ数年の OPETH の大きな躍進を支えた Martin Lopez (dr), Peter Lindgren (g) 両名が離脱するという大きな危機を、Martin Axenrot (dr/BLOODBATH, WITCHERY), Fredrik Åkesson (g/KRUX, ex-TALISMAN, ARCH ENEMY, etc.) を後任に迎えて乗り切らんとする転機の9thアルバム。
メロウだ。これまでの作品同様、グロウルやブラストを孕みながらアグレッシヴに混沌を極める変態パートをガッツリと配しながらも、女性シンガー Nathalie Lorichs 嬢の廉潔なゲスト歌唱をフィーチュアしたオープニングのアコースティックな叙情チューン #1 "Coil" から涌き出る穏やかな印象が最後まで続く。
そんな風に、本作には暗黒の中に狂性を渦巻かせる「僕らの OPETH」の姿はなく、来たる日本公演の最前列に自称コアメタラーな北欧大好き女子軍団を陣取らせるだろう、恐ろしいまでの甘美さが強く主張している。・・・が、その日和ったかの甘ったるささえもヤヴァいほどに魅力的なのが OPETH が OPETH たる凄みだ。
その最たる極みが、レトロ・バラード #4 "Burden" の存在。Per Wiberg (key/SPIRITUAL BEGGARS) のインプット満載な70年代プログレHR風味の中、Mikael Åkerfeldt (vo,g) が眉尻を完全に八の字になりっぱなしにしてる感じでオッサンの色気全開のクリーン・ヴォイスで迫り、エンディングでは Mikael と Fredrik が泣きソロ合戦を繰り広げるうちに、その旋律は美麗なハーモニーへと溶けてゆく・・・か、完璧やん!(泣)
と、甘口に洗練された今の OPETH もメッチャ堪能できるわ。初期のアノ味わいが恋しければ、その当時の彼らの名作群を聴けば何の問題もなくコトが足りるしね。
(Jul, 14, 2008)