Impressions
THE PROVENANCE / Still at Arms Length (2003)
デビュー作にして大傑作だった2001年リリースの "25th Hour; Bleeding" に度肝を抜かれたスウェディッシュ・プログレッシヴ・ゴシック=デス THE PROVENANCE の待望の 2nd アルバム。
オクターヴの単音を同一弦上で上下にスライドさせる不協和音気味のヘヴィなリフと、深みに満ちた繊細なる静粛さに包まれたアコギ/ピアノのアコースティック・パートのダイナミックなその落差が適度な隙間感を保ちながらアーティスティックに描くサウンドの基本スタイルは、相変わらずの「超 OPETH タイプ」!(嬉)
・・・と DISK HEAVEN っぽくタイプ付けをしてみちゃいつつも、その御大 OPETH が剥き出しの骨格から直に伝えるロックなヴァイヴを女声/オルガン/フルート/ストリングスなどの壮麗なウワモノで柔らかに包んだ混沌たる幽玄世界は、既にフォロワーの域を完全に超越。
のっけから OPETH へのリスペクト全開でグイグイと引き込まれる #1 "Climbing Ideals"、嗚咽を震わす濡れ濡れフルートに瞬殺の #3 "Carousel of Descent"、男女デュエットを不穏なヘヴィさの交錯の妙が美味しい #6 "At Random Choose"、ゆったりとした暗黒叙情美とアルコールとが溶け合いそれが凍み渡ったこの身体を自然に揺らす #7 "World of Hurt" ほか圧倒的な完成度を誇る楽曲群が発散する、Emma Hellstrom 嬢の歌うやや Cristina Scabbia 嬢似の女声のエモーショナルな風合いが醸し出す LACUNA COIL 的なフィーリング、そして作品全体を包むアヴァンギャルドなケイオス渦巻く ANEKDOTEN を想わせる暗黒プログレッシヴ・フィーリングの極上の味わいは、この THE PROVENANCE 独特のものだ。
男声シンガー Tobias Martinsson も、本家の Mikael Åkerfeldt には及ばないものの(おっと、比べるのがそもそもオカシイね/笑)濁声と普通声をスイッチしながらのなかなか表現力に溢れたその歌唱は、このバンドの世界観を描く絵筆としては必要十分以上の健闘ぶりだし。
とにかくこの THE PROVENANCE ってば、音像そのものが超好みなんだよね。♪ジャーーン!って白玉のパワー・コード一発で聴こえてくる音の塊を聴いただけでも、その各楽器の配合/分離の絶妙の感触にクラクラするほどだもん。
衝動と計算をアンビリーバボーな次元で融合させる事の出来る、数少ないバンドの一つデスな。わかっちゃいたけどやっぱり降参。
(Feb. 18, 2003)