Picks of the Year - 2002

Albums of the Year

1.
Power of the Dragonflame / RHAPSODY
ヘヴィ・メタルは、数々の古典を経た末に巨強なる飛竜の白熱の聖焔に鍛えられ、自らの内包するその幻想性/戯曲性は今ここに極限まで進化を遂げた。気も狂わんばかりに大仰に展開するこの壮麗絢爛たるミディーヴァル・オペラは、現在のヘヴィ・メタル・フィールドの頂点で聖なる輝きを燦然と放つ。
2.
Dragonslayer / DREAM EVIL
存分に封入された我が血肉となった時代の地に足のついたメタル・テイストには、狂おしきまでの共感を呼び起こされずにはいられない。ヘヴィ・メタルを愛し、その酸いも甘いもすべてを知り尽くした男が満を持してリードする、まさにメタルなコンセプトに溢れた魅惑作。
3.
The Metal Opera Pt.II / TOBIAS SAMMET'S AVANTASIA
それぞれの才能が呼応し合うシンガー陣の快活な息吹が誘う高揚が心地良い。ドラマの流れの中で各楽曲を的確に色付けた一大ストーリー・アルバムながら、各曲が単体でも見事に機能するという偉業も、稀代の大天才 Tobias Sammet の類稀な才覚の成せる技か。
4.
Verse / AKIN
ほんのりとデジ=ポップな哀愁ゴシック・メタルの主導権を握るのは、泣きのテクニカル・ギター・ワーク。柔らかく澄んだ女声と醜悪な濁声が生む愛憎に、さらに激情を交錯させてゆく様には悶絶を禁じ得ない。何の前触れもなくフランスから突如出現した女声ゴシックの大々傑作。
5.
Sign of Truth / DIONYSUS
「北欧メタル」・・・その甘美なる冠を授けるに足りる資格を持った水晶の如き旋律美を携え、我等が Johnny Öhlin が帰還した。堅実なユーロ・メタルの中に脈々と波打つ構築美に満ちた北欧ネオ=クラシカルの血流は、「NATION の再来」を称えるが如く我が身にその鼓動を激しく共鳴させる。
6.
Prophet of the Last Eclipse / LUCA TURILLI
宇宙に飛び出したシンフォニック・メタルがコズミックなデジ=テックを味方に更なる飛翔を見せるこのゴージャスなドラマの妙は、まさに「スペース・オペラ」の名に相応しい悶絶絵巻。古典と未来が亜空間の坩堝の中で融合した、独特のトータル・カラーに塗り尽くされた壮大なる力作。
7.
Deliverance / OPETH
演者の圧倒的な資質の高さを感じさせる有機的な息遣いが描く、死の香りが誘うモノクロームの心象世界。息詰まる狂気を孕んだ緻密さと安堵を齎す長閑さが、崖縁で綱渡りを繰り返しながら底知れぬ深さで拡散する、そのプログレッシヴな反復に身を任す快感のなんと素晴らしいことよ。
8.
Time Requiem / TIME REQUIEM
不世出の鍵盤魔人が遂に到達した、前人未到の鍵盤地獄の最深部。神聖なオーラに包まれた崇高なエゴが誘う圧倒的な弾きまくりに次ぐ弾きまくりの嵐は、聴いているだけで思わず手の甲が吊ってくるような前代未聞の違和感を与え、さらにそれを快感に変化させる超魔力に包まれている。
9.
The Odyssey / SYMPHONY X
これまでとは何かが違う別次元の新しいエネルギーが生んだ一大スペクタクル叙事詩は、暗雲に包まれていた輪廻を断ち切る威厳溢れる意欲作。エッジの切り立ったヘヴィネスとクラシカルなリリシズム、そしてプログレッシヴな混沌を比類なき演奏能力で緊迫感たっぷりに纏め上げた痛快な一撃。
10.
Remedy Lane / PAIN OF SALVATION
目を閉じ微動だにせず、難解に絡んだ漆黒の紐を解く心地良さに浸りたい唯一無二の気高き内省世界。荒涼とした精神世界のナイーヴな絶望的暗さは絶品の一言。収斂~躍動~拡散~集中を繰り返しながら変幻自在に展開する楽曲に、心に染みる表情豊かな美しさを見せる旋律が儚く響く。
11.
The Gates of Oblivion / DARK MOOR
恐るべき急成長を見せる西班牙の至宝。ハイ=テンションに畳み掛けるクラシカルなシンフォニック攻撃に援護され、ある種の格調高さまでもを感じさせながら疾走するこの一級品の XaMetal には、「悶絶」の二文字がよく似合う。Elisa 嬢の勇壮な歌唱にも惚れ惚れ。

Tunes of the Year

1.
Live and Learn / ANGRA from "Hunters and Prey"
奇跡の完全復活をさらに印象付ける ANGRA 史上に輝く名曲。幻惑を誘う凄絶なギター・パートと張り&艶に満ちた極上の歌唱が手を取り合って、澄み渡る藍い空を疾走する。
2.
Victorious One / NORTHER from "Dreams of Endless War"
極北からの新たな戦士が生んだ奇跡。暴虐なまでに疾走する悲愴感に満ちた美旋律が携えた勇壮なる決意に、本能が雄叫びを上げて応えを表明する。止め処なく溢れ出る涙を拭いもせず・・・。
3.
Shadowland / NOCTURNAL RITES from "Shadowland"
豪快にヒットするヘヴィ・ボトムのパワー感に支えられた、劇メロ炸裂なダイナミック鋼鉄チューン。正統ヘヴィ・メタルならではの硬質な手触りと共に北欧叙情メロディの愁いが存分に楽しめるその醍醐味は格別。
4.
Betrayal / HALFORD from "Crucible"
「Rob Halford が歌うべき楽曲」に求める要素を見事なまでにコンパクトに纏め上げた史実に記されるべき名曲。HALFORD の天命の爆裂さえ伝わる張り詰めたエキサイトメントには、死を賭したヘッド・バングを禁じ得ない。
5.
Visions of Sorrow / ZONATA from "Buried Alive"
独特のセンス&アイデアが結実した、オーケストレーションの壮麗さに頬が綻ぶ緩急に満ちたドラマティックな疾走曲。メロメロな衣の奥に潜む剛健なテイストと端整な激情を封じ込めたナイーヴな泣きギター・プレイも耳を惹く。
6.
Through Eleven Woods and Dwaren Mines / DRAGONLAND from "Holy War"
King Diamond 先生も認めた至上の鍵盤センスが壮麗&大仰に描く勇壮なるファンタジー。あたかも寓話世界の中でエルフの森やドワーフの鉱山を旅しているかの劇的展開のクライマックスは、なぜか疾走ポルカの大爆発。
7.
As We Speak / SOILWORK from "Natural Born Chaos"
エクストリームな尖鋭アグレッションをインテリジェントなメロウ・テイストの柔らかなベールで包み込んだスマートなメロディック・ブルート。触れる者すべてを傷つける削面を丁寧にコーティングしたエナメルの輝きに癒される。
8.
Death is the Hunter / THE CROWN from "Crowned in Terror"
本能レベルで高揚を誘うシャープな激烈アグレッションと双璧を成すもう一つの魅力が、Marcus Sunesson が紡ぎだす叙情旋律。その北欧風味のギター・プレイ満載のこの曲のインパクトは絶大だった。
9.
Eyes of Love / JEFF SCOTT SOTO from "Prism"
Jeff の瑞々しいメランコリーが弾ける情熱に満ちた歌声は、この曲の様な哀愁ハード・ロックによく映える。その絶唱と化学反応を起こした Howie Simon のエネルギッシュなテクニカル・ギター・リックも悶絶を誘う超佳曲。
10.
Sharpeshifter / THEORY IN PRACTICE from "Colonizing the Sun"
馬鹿馬鹿しいまでの音密度で突っ走る自己満足寸前の変態テクニカルな緊張の極限に、我が心は歓喜の悲鳴を上げる。超絶技巧から迸るメロディ/ハーモニーの端々から浮かぶ言葉は・・・「21世紀に蘇った CACOPHONY」。
11.
Echelon / RALPH SANTOLLA from "Shaolin Monks in the Temple of Metal"
Ralph Santolla が、彼独特の絶妙なフレーズ構築センスをもって見事に具現化したのは、かつての「神」Michael Schenker の幻影。 号泣しながらエア・ギター必至の名インストゥルメンタル・チューン。
12.
月に叢雲花に風 / 陰陽座 from "煌神羅刹"
和の心に煌きながら快活に鼓動を響かせるキャッチーなハード・ロックは、美しき歌姫黒猫の変幻自在の歌唱を怪しく照らす。センス良く紡がれるウェットなギター・フレーズの妙も御見事。

Players of the Year

Male Singer: Ville Laihiala (SENTENCED)
荒涼たる死の凍土を震わす、漢の熱き誓いの叫び。刹那なる言霊のその威力は、技能を超越した何かの存在をしっかりと確信させる。Down から5年、まさかここまでの存在感を溢れさす程に成長するとは・・・。
Female Singer: Lalaith (Kaisa Jouhki) (BATTLELORE)
長剣と弓を操る美しきウッド・エルフ。彼女が発する可憐に浮遊するキュート・ヴォイスを耳にする度、この身は悶々とした劣情に惑わされてしまう。あぁ、そのその尖り耳で(以下略)。
Guitar Player #1: Gus G. (DREAM EVIL, FIREWIND)
己に酔う姿が様になる久々のナルシスト型ギター・ヒーロー降誕。Uli 譲りのタッチ&センスが紡ぐ激情に満ちた旋律美は絶品の一言。Losing You での極限まで泣き尽くす凄絶なソロ・ワークは末代まで語り継ぐべき名演だ。
Guitar Player #2: Cyril Achard (CYRIL ACHARD'S MORBID FEELING)
すべてを飲み込んだ老獪なるセンスのもと、完璧なテクニックで爪弾かれる凄絶なネオ=クラシカル・プレイの圧倒的な緊張感は、瞳の中に炎を揺らす。プログレッシヴかつポップな作曲/アレンジ能力にも脱帽。フランス恐るべし。
Bass Guitar Player: Dick Lövgren (LAST TRIBE, TIME REQUIEM)
ネオ=クラシカル・メタルのテクニカルなスリルを倍化させる激ファストなユニゾン・プレイを連発する若き超絶ベーシスト。6弦ベースから生み出される彼でなければ生み出せないその至高なるスリルは、この世界の宝だ。
Drum Player: Alex Holzwarth (RHAPSODY, TOBIAS SAMMET'S AVANTASIA)
この男のモーターが生み出す疾走感 ―近年のメタルにとって最も重要なファクターの一つ― は、数多のドラマーの中において最もこの心を心地良く高揚させる。繊細な軽やかさとパワフルな重量感のバランスがとにかく絶妙。
Keyboard Player: Mark Vikar (BEHOLDER)
それまで文句なく最有力候補だった鍵盤魔人 Richard Andersson の名は、一本の P.V. を観た瞬間に忘却の彼方へと去った。 その熱き最狂パフォーマンスから漏れ出る神々しいまでのメタル愛に最上級の Hail。

Cover Art of the Year

Perpetual Twilight / AXENSTAR Artwork by Travis Smith

魔都の外れに眠るかつての聖騎士の墓標に、幼き天使は何を祈り何を語りかけるのか・・・。題材/色調/タッチ/構図、すべてがパーフェクトにツボ。


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